【初心者向け】AIに指示を出すためのヒント
AIは私たちの世界を革新的に変える力を持ちますが、その鍵を握るのがプロンプトエンジニアリングです。この記事では、AIモデルを使いこなすための必須スキルであるプロンプトエンジニアリングの基本を初心者にも分かりやすく解説します。
GPTの技術的背景
GPT (Generative Pre-training Transformer) は、膨大なデータセットから学習し、複雑な言語タスクを処理するAIモデルです。具体的には、以下の能力を持ちます。
- 文章生成
- 翻訳
- 要約
- 質問応答
- コード生成
GPTは、Transformerと呼ばれるニューラルネットワーク(人間の脳の仕組みを模倣した機械学習モデル)アーキテクチャに基づいて構築されています。Transformerは、文章中の単語間の関係を理解することに優れており、自然言語処理タスクに高い性能を発揮します。
GPT: Generative Pre-training Transformer の略。
Transformer: ニューラルネットワークアーキテクチャの一種。
プロンプトの種類
プロンプトは、AIに指示を与えるためのテキストです。
プロンプトの種類は様々ですが、代表的なものは以下の3つです。
1 指示型プロンプト
AIモデルに具体的な指示を与えるプロンプトです。
- 「500字の短編小説を書いてください。テーマは未来都市です。」
- 「英語のウェブサイトを日本語に翻訳してください。」
2 質問型プロンプト
AIモデルに質問するプロンプトです。
- 「東京の現在の気温は何度ですか?」
- 「フランスの首都はどこですか?」
3 記述型プロンプト
AIモデルに情報を提供するプロンプトです。
- 「気候変動が農業に与える影響についてのレポートを書いてください。」
- 「この製品のレビューを書いてください。」
プロンプトの構成要素
プロンプトは、以下の要素で構成されます。
- 命令(Command):AIモデルに実行するタスクを指示します。
- 文脈(Context):タスクに関する背景情報を提供します。
- 入力データ(Input Data):タスクに必要なデータを提供します。
- 出力指示(Output Instruction):AIモデルの出力結果に関する指示をします。
命令(Command)
命令は、AIモデルに実行するタスクを具体的に指示します。
- 「翻訳してください。」
- 「要約してください。」
- 「コードを書いてください。」
文脈(Context)背景
文脈は、タスクに関する背景情報を提供することで、AIモデルの理解を深めます。
- 「このウェブサイトは医療機器に関するものです。」
- 「この製品はスマートフォンケースです。」
入力データ(Input Data)
入力データは、タスクに必要なデータを提供します。(参照となるデータ)
- 「翻訳するウェブサイトのURLは以下の通りです。」
- 「要約する文章は以下の通りです。」
出力指示(Output Instruction)
出力指示は、AIモデルの出力結果に関する指示をします。具体例を加えるとより正確になります。
- 「翻訳されたテキストは、原文のレイアウトを保持してください。」
- 「要点は箇条書きで、5つ以内にまとめてください。」
命令: プロンプトの中で、AIモデルに実行するタスクを指示する部分。
文脈: プロンプトの中で、タスクに関する背景情報を提供する部分。
入力データ: プロンプトの中で、タスクに必要なデータを提供する部分。
出力指示: プロンプトの中で、AIモデルの出力結果に関する指示をする部分。
主なアウトプットフォーマット一覧です。(抜粋)
アウトプットフォーマット | 説明 | プロンプト例 |
---|---|---|
テキスト形式 | 通常の文章、リスト、段落などの基本的なテキスト形式 | 「あなたの日常生活における時間管理のコツを教えてください。」 |
リスト表示(順序あり/なし) | 項目を順序あり(な)しのリスト形式(箇条書き)で表示 | 「項目を順序あり(なし)のリスト形式で表示してください。」 |
チェックリスト | 完了すべきタスクやアイテムのチェックリスト | 「キャンプに持っていくべき必需品のチェックリストを作成してください。」 |
表形式 | データを行と列で整理した表表示 | 「項目を表形式で表示してください。」 |
CSV形式 | データをコンマ区切りの形式で表示 | 「都市名、人口、国のデータをCSV形式で提供してください。」 |
要約 | 長い文章や複雑なトピックを簡潔に要約する形式 | 「最近の国際会議の主要な議題と結果を要約してください。」 |
インストラクション | 手順や作業の指示を明確に示す形式 | 「新しいスマートフォンの初期設定方法を教えてください。」 |
クイズや問題 | 知識確認や教育的な目的のためのクイズや問題形式 | 「歴史に関する簡単なクイズをいくつか作ってください。」 |
レビューや評価 | 製品、サービス、文学作品などのレビューや評価 | 「最新のスマートウォッチについてのレビューを書いてください。」 |
比較表 | 異なる項目や概念を比較するための表 | 「異なるタイプのコーヒーメーカーを比較してください。」 |
Mermaid図(データの可視化) | フローチャート、シーケンス図、ガントチャートなどの図形式 | 「プロジェクトの進行を示すガントチャートを作成してください。」 |
コードブロック | プログラミング言語のコードやコマンドを表示する形式 | 「Pythonで簡単な「Hello World」プログラムを示してください。」 |
マークダウン形式 | マークダウン記法を使用したフォーマット | 「ブログ記事をマークダウン形式で書いてください。」 |
HTML/CSS形式 | HTMLやCSSを使ったウェブコンテンツの形式 | 「シンプルな個人ウェブサイトのHTMLコードを作成してください。」 |
数学的表現 | 数式や数学的な表現を使用した形式 | 「フィボナッチ数列の最初の10項を示してください。」 |
クリエイティブライティング | 物語、詩、スクリプトなど創造的な文章形式 | 「春についての詩を書いてください。」 |
プロンプトの最適化と構造化
プロンプトの最適化
プロンプトの品質は、AIモデルの出力結果に大きく影響します。そのため、プロンプトを最適化することは、AIモデルを使いこなす上で非常に重要です。
プロンプトを最適化するためのポイントは以下の通りです。
- 明確かつ簡潔に書く: プロンプトは、AIモデルに指示を与えるためのものです。そのため、明確かつ簡潔に書くことが重要です。
- 適切な文脈を提供する: プロンプトには、タスクに関する背景情報や必要な情報を提供する必要があります。
- 具体例を示す: 可能であれば、具体的な例を示すことで、AIモデルの理解を深めることができます。
- 適切な指示を与える: AIモデルにどのような出力結果を求めているかを、具体的に指示する必要があります。
プロンプトの構造化
プロンプトを構造化することで、AIモデルの理解を深め、より良い出力結果を得ることができます。
プロンプトを構造化するための方法はいくつかありますが、代表的なものは以下の通りです。
- テンプレートを使う: テンプレートを使うことで、プロンプトを統一的に記述することができます。
- セクションに分ける: プロンプトをセクションに分けることで、AIモデルが情報を理解しやすくなります。
- 箇条書きを使う: 箇条書きを使うことで、情報を整理しやすくなります。
テンプレート: プロンプトの形式を定めたもの。
セクション: プロンプトを分割した部分。
記号の利用
プロンプトを構造化するために、記号を利用することができます。記号は、プロンプトの各要素を明確に区別し、AIモデルが情報を理解しやすくするために役立ちます。
代表的な記号と利用例
ハッシュタグ (#): 特定のキーワードやトピックを強調するのに使われます。
ハイフン (-): 箇条書き又はオプションの羅列。
コロン(:): コマンドと引数を区別するために使用します。
# 命令: 翻訳
# 引数:
- 翻訳元の言語: 英語
- 翻訳先の言語: 日本語
- 翻訳する文章: こんにちは、世界!
括弧( ): 補足情報を提供するために使用します。
# 命令: ニュース記事を要約する
# 引数:
- 記事のURL: https://www.bbc.com/news/world-asia-china-60317974
- 要約の長さ: 500文字 (オプション)
その他
- 上記以外にも、様々な記号を利用することができます。
- 記号の使い方は、プロンプトエンジニアによって異なる場合があります。
- 一貫性のある記号体系を使用することが重要です。
記号を利用することで、プロンプトをより明確かつ分かりやすく記述することができます。
変数の利用
プロンプトに変数を使用することで、柔軟性と汎用性を高めることができます。変数は、ユーザーが入力した値や、処理中に生成された値を格納するための placeholder です。
変数使用例
以下の例は、変数を使用してプロンプトを汎用化した例です。
# 命令:文章の翻訳
# 入力データ:
- 翻訳元の言語: <言語>
- 翻訳先の言語: 日本語
- 翻訳する文章: <文章>
# 出力指示:
翻訳された文章
この例では、<言語>
と <文章>
(山括弧)を変数として使用しています。ユーザーは、翻訳元の言語と翻訳したい文章を入力することで、様々な言語の文章を日本語に翻訳することができます。{}
(波括弧)も、変数を定義する際によく使われます。
変数: ユーザーが入力した値や、処理中に生成された値を格納するための placeholder。
汎用プロンプトの応用:多様な分野の用例
プロンプトエンジニアリングは、様々な分野で応用することができます。以下は、その例です。
ビジネス分析レポート
# 命令:
- 市場トレンドの分析
# 入力データ:
- 最近の市場データ
# 出力指示:
- 詳細な分析レポート
教育資料の要約
# 命令:
- 教科書の要約
# 入力データ:
- 指定された章
# 出力指示:
- 要点のリスト
エンターテインメント関連コンテンツ
# 命令:
- 映画のあらすじ生成
# 入力データ:
- 映画の基本情報
# 出力指示:
- 短いあらすじ
その他
- 法務文書作成
- プログラミング
- ゲーム開発
- 音楽作曲
汎用プロンプト: 様々なタスクに適用できるプロンプト。
出力に関する注意事項
GPTは、様々なタスクを実行できる強力な言語モデルですが、いくつかの注意事項があります。
ハルシネーション
GPTは、現実には存在しない情報を生成することがあります。これは「ハルシネーション」と呼ばれる現象です。出力結果を鵜呑みにせず、常に事実確認を行うようにしましょう。
- 出力結果を鵜呑みにせず、必ず他の情報源と照らし合わせて事実確認を行う。
- 出力結果に矛盾や不自然な点がないか確認する。
- ハルシネーションの可能性が高いと判断した場合は、別の方法で情報を収集する。
正確性が求められる場合は、必ずファクトチェックをしてください。
文字数の制限
GPTは、設定された文字数制限を超えると、出力内容が途切れたり、不自然になったりする可能性があります。
- 長い文章を生成したい場合は、プロンプトを分割して複数回実行する。
- より長い文章を生成できるモデルを使用する。
ひとつのチャットが長すぎた場合、最初のチャットを忘れて返答が繋がらなくなる場合があります。
一度目の出力が必ずしもベストではない
GPTは、複数回の出力結果を比較検討することで、より良い結果を得ることができます。
- 満足できる結果が得られるまで、何度か実行してみる。
- 出力結果を比較して、最も良いものを選択する。
GPTは文句を言いませんので、評価と改善を繰り返して結果の品質を上げてください。
倫理的な配慮
GPTは、差別的、攻撃的、偏見のあるテキストを生成する可能性があります。
- プロンプトに差別的な表現を含めない。
- 出力結果を倫理的な観点から評価し、問題があれば修正する。
この部分に関しては、GPT側で対策が進んでいてアラートがでる可能性があります。
まとめ
プロンプトエンジニアリングは、AIモデルの可能性を最大限に引き出すための重要なスキルです。このガイドを参考に、プロンプト作成に挑戦してみてください。