ChatGPTの能力を最大限引き出す構造化アプローチ:8+1の公式
七里式プロンプトは、ChatGPTとの対話を効果的に行うための構造化された指示方法です。本記事では、その基本テンプレートや具体例を初心者にもわかりやすくまとめてみました。ステップバイステップで学べる七里式プロンプトの活用法を紹介し、AIとのコミュニケーションスキル向上を目指します。
七里式プロンプト「8+1の公式」とは
七里式プロンプトは、日本のAIエンジニアである七里圭氏が考案した、ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)とのコミュニケーションを最適化するための手法です。その中核をなすのが「8+1の公式」です。
「8+1の公式」は、以下の9つの要素で構成されています:
- 前提条件
- 対象プロファイル
- 参考情報
- 名詞と動詞を使った実行指示
- 形容詞をつけて精度を上げる
- 出力形式(文章)
- 出力形式(形)
- スタイル
- 追加指示(+1)
これらの要素を過不足なく盛り込むことで、AIに”人間のように”考えさせ、質問者の意図を正しく理解し、その文脈に即した回答を生成できるようになります。つまり、AIとのコミュニケーションを円滑に進め、より質の高いアウトプットを得るためのフレームワークと言えるでしょう。
「8+1の公式」の各要素の詳細
それでは、各要素について詳しく見ていきましょう。
1. 前提条件
タイトル、依頼者条件、制作者条件、目的と目標を明確にします。AIにタスクの全体像を理解させるために重要な要素です。
- タイトル:プロジェクトや課題の名前を明確に
- 依頼者条件:誰がこの回答を求めているのか
- 制作者条件:どのような能力を持つ人物が回答すべきか
- 目的と目標:何を達成したいのか
例:
タイトル:健康的な朝食レシピの提案
依頼者条件:忙しい会社員
制作者条件:栄養バランスに詳しい料理人
目的と目標:簡単で栄養バランスの良い朝食レシピを提案する
2. 対象プロファイル
回答の対象となる人物や集団の特徴を具体的に示します。ペルソナを設定することで、AIはより的確な回答を生成できます。
例:
年齢:30代
性別:男性
職業:IT企業勤務
生活習慣:朝は忙しく、時間がない
3. 参考情報
AIが回答を生成するのに役立つ具体的な情報やデータを提供します。データや前提知識を与えることで、AIの回答精度を高めることができます。
例:
朝食に適した食材:卵、全粒粉パン、アボカド、ヨーグルト
調理時間の制限:15分以内
栄養バランス:タンパク質、炭水化物、健康的な脂質を含む
4. 名詞と動詞を使った実行指示
AIに何をしてほしいかを明確に指示します。命令形ではなく、名詞と動詞を組み合わせることで、より自然な指示となります。
例:
{対象プロファイル}に対して、
{参考情報}を活用して、
健康的で簡単な朝食レシピを3つ提案してください。
5. 形容詞をつけて精度を上げる
回答の質や特性を形容詞で指定します。より具体的なイメージをAIに伝えることで、希望する回答に近づけることができます。
例:
栄養バランスの良い、時間効率の良い、美味しい
6. 出力形式(文章)
回答の文章形式を指定します。箇条書き、段落、表など、希望する形式を指定することで、整理された回答を得られます。
各レシピを以下の形式で説明してください:
1. レシピ名
2. 材料(2人分)
3. 作り方(箇条書きで5つ以内)
4. 調理時間
5. 栄養バランスの説明(50字以内)
7. 出力形式(形)
回答の構造や形式を具体的に指定します。視覚的な構造を指定することで、読みやすい回答を得られます。
例:
3つのレシピを番号付きリストで提示し、各レシピの後に空行を入れてください。
8. スタイル
文体や表現のトーンを指定します。丁寧、カジュアル、ユーモラスなど、状況に合わせたスタイルを指定することができます。
例:
簡潔で分かりやすい言葉を使い、励ましの言葉を含めてください。
9. 追加指示(+1)
必要に応じて追加の指示や修正を行います。補足情報や、より詳細な指示を与えることで、AIの回答を微調整することができます。
例:
各レシピの最後に、週末の準備方法についてのヒントを1つ追加してください。
これらの要素を組み合わせることで、AIからより精度の高い、目的に沿った回答を得ることができます。実際に使用する際は、プロジェクトの性質や目的に応じて、各要素の重要度を調整し、柔軟に適用することが大切です。
「8+1の公式」を使ったプロンプト例
それでは、「8+1の公式」を使った具体的なプロンプト例を見てみましょう。
1. 前提条件:
タイトル: 楽しい子供向けの科学実験の説明を書く
依頼者条件: 小学校の教師
制作者条件: 子供に科学の楽しさを伝える能力を持った人
目的と目標: 子供たちが興味を持つ科学実験の説明を作成する
2. 対象プロファイル:
名前: たけし
年齢: 10歳
性別: 男性
学年: 小学4年生
興味: ロボット、宇宙、恐竜
性格: 好奇心旺盛、活発
3. 参考情報:
実験内容: 簡単な化学反応で色が変わる液体の作成
必要な材料: 食紅、重曹、酢、水
手順:
1. コップに水を半分注ぐ
2. 食紅を数滴入れてかき混ぜる
3. 重曹を小さじ1杯入れてかき混ぜる
4. 最後に酢を少しずつ注ぐと色が変わる
4. 名詞と動詞:
{対象プロファイル}に対して、
{参考情報}を活用して、
科学の楽しさを伝えるための実験の説明を書いて。
5. 形容詞:
楽しい、分かりやすい
6. 出力形式(文章):
話し言葉形式で書き出してください。
7. 出力形式(形):
たけしくんへ、
<本文を記入>
楽しい実験を楽しんでね!
8. スタイル:
カジュアルで親しみやすい口調で書いてください。
9. 追加指示:
実験の安全性に関する注意点も含めてください。
「8+1の公式」を使ったプロンプトの回答例
上記のプロンプトをChatGPTに送信した場合、以下のような回答が得られる可能性があります:
たけしくんへ、
こんにちは!今日は、君の大好きな科学をもっと楽しくするための素敵な実験を紹介するね。この実験は、簡単な材料で色が変わる液体を作ることができるんだ。まるで魔法みたいで、とっても面白いよ!
必要な材料は以下の通りだよ:
・食紅(君の好きな色を選んでね)
・重曹(小さじ1杯)
・酢(少し)
・水(コップ半分)
それじゃあ、早速始めよう!
まず、コップに水を半分注いでね。次に、食紅を数滴入れてかき混ぜてみて。水が綺麗な色に変わるのを見てみよう。
それから、重曹を小さじ1杯加えて、よくかき混ぜてね。このとき、泡が立つかもしれないから注意してね。
最後に、酢を少しずつ注いでみて。色が変わるのをじっくり観察してみよう。まるで魔法のように色が変わるよ!
どう?簡単で楽しいでしょ?この実験を通じて、化学反応がどんなに面白いかを体験できるよ。ロボットや宇宙、恐竜と同じくらい、科学もとってもクールだよね!
安全のために、必ず大人の人と一緒に実験をしてね。酢や重曹が目に入らないように気をつけて、実験が終わったら手をよく洗おう。
楽しい実験を楽しんでね!
「8+1の公式」を使って感情を込めた文章を書く方法
「8+1の公式」は、単なる情報提供だけでなく、感情を込めた文章を作成するのにも役立ちます。各要素を工夫することで、読み手の心に響く文章を生成することができます。
- 前提条件の設定:
まず、文章の目的や対象読者を明確にします。例えば「感動的な手紙を書く」という目的で、「大切な友人」を対象とします。 - 対象プロファイルの活用:
読者の特徴や背景を具体的に設定します。例えば「長年の親友で、最近転職した30代の女性」といった具合です。 - 参考情報の提供:
感情を表現するのに役立つ情報を盛り込みます。例えば「共有している思い出」や「相手の性格」などです。 - 名詞と動詞の使用:
具体的な行動や状況を描写します。「あなたの笑顔が私の心を温めてくれた」といった表現を使います。 - 形容詞の活用:
感情を表現する形容詞を効果的に使います。「心温まる」「感動的な」「胸が熱くなる」などです。 - 出力形式(文章)の指定:
手紙形式や日記形式など、適切な文章スタイルを選びます。 - 出力形式(形)の指定:
段落構成や文章の長さなどを指定します。 - スタイルの選択:
親密さや丁寧さのレベルを設定します。例えば「親しみやすく、でも丁寧な口調」などです。 - 追加指示(+1):
特定の感情表現や比喩を使うよう指示します。例えば「自然の比喩を使って感情を表現する」といった具合です。
例えば、以下のようなプロンプトで、友人に送る感動的な手紙を作成することができます。
- 前提条件:
- タイトル: 親友への手紙
- 依頼者条件: あなた自身
- 制作者条件: あなた自身
- 目的と目標: 親友への感謝と励ましの気持ちを伝える
- 対象プロファイル:
- 名前: 美咲
- 年齢: 30代
- 職業: 最近転職したばかり
- 性格: 明るく、努力家
- 参考情報:
- 二人で旅行に行った思い出
- 美咲が転職活動で頑張っていたこと
- 美咲の新しい仕事への期待
- 名詞と動詞:美咲への感謝と励ましの気持ちを伝える手紙を書いてください。
- 形容詞:心温まる、感動的な、励みになる
- 出力形式(文章):手紙形式で
- 出力形式(形):3段落程度
- スタイル:親しみやすく、丁寧な口調
- 追加指示:共有した思い出や、美咲の性格を踏まえて、心のこもった表現を使ってください。
「親愛なる美咲へ、
君の新しい挑戦の知らせを聞いて、胸が熱くなりました。私たちが初めて出会った日のことを思い出すよ。あの日の君の輝く瞳は、今でも春の陽光のように鮮やかに心に残っています。
長い年月を経て、君はますます強く、美しく成長しました。新しい仕事できっと素晴らしい花を咲かせることでしょう。君の勇気ある決断に、心からの拍手を送ります。
これからも、どんな時も君の味方でいられることを誇りに思います。君の幸せが、私の喜びなのだから。
いつまでも変わらぬ友情を込めて、
[あなたの名前]」
このように、「8+1の公式」は、感情表現豊かな文章を作成するためにも活用できます。状況に応じて、各要素を適切に設定することで、より効果的なコミュニケーションが可能になります。
七里式プロンプト「8+1の公式」の活用メリット
- 明確な構造: 9つの要素に分けることで、AIへの指示が整理され、的確な回答を得やすくなります。
- 柔軟性: 様々なタスクや目的に応じてカスタマイズできます。
- 効率性: 必要な情報を漏れなく提供することで、AIとの対話の往復を減らせます。
- 一貫性: 同じ構造を使うことで、複数のプロジェクトや人員間で一貫したAI利用が可能になります。
- 学習容易性: 構造が明確なため、チーム内での共有や教育が容易です。
- 精度向上: 形容詞や追加指示により、回答の質を高められます。
- 文脈理解の促進: 前提条件や対象プロファイルにより、AIがより適切な文脈で回答を生成できます。
- 創造性の向上: AIとの対話を構造化することで、人間の創造性を促進し、新しいアイデアを生み出すきっかけとなります。
注意点とベストプラクティス
- 簡潔さを保つ: 各セクションは必要最小限の情報に留めましょう。
- 具体的に指示する: 曖昧な表現は避け、具体的な指示を心がけます。
- 倫理的配慮: AIに非倫理的な内容を生成させないよう注意しましょう。
- 定期的な見直し: AIの能力は日々進化しているため、プロンプトも適宜更新しましょう。
- 結果の検証: AIの出力は常に人間がチェックし、必要に応じて修正を加えましょう。
- バランスの取れた情報提供: 各要素に過不足なく情報を盛り込むことが重要です。
- スタイルと内容の一致: 指定したスタイルと内容が矛盾しないよう注意しましょう。
- AIの特性を理解する: ChatGPTはあくまで言語モデルであり、感情や意識を持つわけではありません。その点を理解した上で、適切に活用することが重要です。
まとめ
七里式プロンプト「8+1の公式」は、AIとのコミュニケーションを構造化し、効果的に活用するための強力なツールです。9つの要素を適切に組み合わせることで、AIからより精度の高い、有用な回答を得ることができます。
この記事で紹介したステップや具体例を参考に、ぜひ自分なりの「8+1の公式」プロンプトを作成し、AIとの対話をより豊かなものにしていってください。練習を重ねることで、AIを使いこなし、様々なタスクを効率的にこなせるようになるでしょう。ぜひ、ChatGPTの可能性を最大限に引き出してみてください!